『ベアルファレス』混沌の時代を、ともに
昔むかし、プレイステーションという魔物がおりました。
数多のクリエイター果ては魑魅魍魎にいたるまで、その魔物を深く愛しました。
時はまさに未曾有のゲーム戦国時代。
伝説級の超大作から、紙芝居めいた小品まで。市場の売れ筋に拘らない、様々なゲームソフトが生まれました。
多くの中小ゲーム会社が台頭し、綺羅星のように煌めいては消えてゆきました。
プレイステーション全盛期。
ゲーム史に燦然と輝く極限のカオス。
乱雑で、しかし希望に満ちた、そんな時代でありました。
――与太話はともかく。これからするのは、そんなしっちゃかめっちゃかな時代に生まれた一本のゲームソフト。
あの時代だからこそ生まれ、そして混沌の渦に飲まれていった名作であります。
その名は『ベアルファレス』。
ゲームアーカイブスで今でも販売中なので、PS3かPSVitaをお持ちの方はぜひ買ってみてほしい。
何を隠そう、ワタシはこのゲーム、8周しました。それでもまだ足りんのです。たぶんこのゲームの大ファンならば「まだ8周?」と鼻で笑うことでしょう。
ちょっとやろうかなと始めて、第2節までやってしまったが最後……。
1周12~16時間前後でクリアできるので、結局2日3日かけていっぺんに最後までやってしまうという。
いやー……面白いんですよ……。
何がいいって、もちろんパズルアクション要素もメッチャ面白いんですが、やっぱりシナリオですよ。
元々ワタシはひとつの街を拠点として展開するタイプのRPGが大好きなんですが、これはまさにその理想形。
謎の地下遺跡「アスラ・ファエル」と、その中を探索する冒険者たちの街「カルス・バスティード」。
新たにその町へやってきた主人公を含む14人の若い冒険者たちが、それぞれの目的を胸に遺跡に挑む物語です。
パッと見はゲームブック的ファンタジーRPGな感じですが、しかし予測のつかない展開がこのゲームのいいところ。
遺跡の探索に少しだけ慣れてきた頃になると、突如として主人公たちに壮絶な運命が襲いかかるわけです。
これがまたハードかつ無慈悲。これ以降も終盤までずっと、かなりシリアス寄りでテンポよく物語が進行していきます。
だからそこまで進むとやめられなくなっちゃうんだよなー……! 何周してても展開が楽しくってなー……!
徐々に明らかになる遺跡の謎、そして出没する怪物たちの正体……
運命はいつしか主人公たちに過酷な試練と選択を課していきます。
そんな物語の主役をつとめる14人の冒険者たち。彼らがこのゲームの魅力の中核を担うと言っても過言ではないでしょう。
それぞれ出身国も地位も街に来た目的も違う、個性豊かな若者たちです。ある者は出稼ぎに、ある者は修行に、ある者は遺跡調査に、ある者はただの興味本位で……。そんな意識の違いが衝突を生んだり、あるいは信頼を生んだりしていきます。
困っている仲間がいれば迷いなく助ける善人もいれば、我関せずを決め込むキャラクターもいたり、一筋縄ではいきません。それぞれに主義と信念があったりなかったりするわけです。
そう、この主人公を除く13人の仲間たち、キャラが立ってるだけでなくシステム的にもすごく生き生きしてるんですよね……!
街にはこの14人が滞在している寄宿舎があって、ダンジョンに行く前にそこで仲間を2人まで誘っていけるわけですが。
たとえば部屋に誘いに行っても、そのキャラは他のキャラを誘ってダンジョンに潜っている最中だったりもするわけです。
それだけでなく、時間帯によっては酒場のお手伝いに行っている子がいたり、
夜型のキャラを朝早くに迎えに行ったらすっかり寝ぼけていたり。
他にも信頼度や、他に誰を連れているかで細かくイベントが発生したりと、凄まじい作り込み。
(未だにファンの間でも発生条件がわかってないイベントもあるとか)
そういうシステムもあって、普通に進めているだけで仲間たちに愛着がわいてきちゃいます。
その中にあって、主人公はキャラメイク式。性別、出身国、地位、目的をプレイヤーが自由に決める形で主人公を作成します。キャラメイクによってシナリオが大きく変化することはありませんが、細かいところに影響があったりします。
とりわけ地位は貴族から農民まであり、これによって使用武器の種類が決定されますが、仲間たちからの印象も変わる、というのが面白いところですね。
『ベアルファレス』の舞台となる大陸は長らく争いもない平和な時代が続いているため、貴族たちの腐敗によってひどい格差社会が生まれています。
そのため、貴族は基本的に平民のキャラクターにはいい顔をされませんし、同じ貴族であれば最初からいい印象を与えたりもできます。
この主人公、いわゆる無口主人公なのですが、ストーリー中の選択によって性格まで決まってくるのがまた面白い!
たとえば人助けの依頼に乗ったり乗らなかったり、口では乗らないと言いながら影で協力したり……
こうした選択の結果如何で、後で仲間から「優しい」だとか「冷たい奴」だとか「ひねくれ者」だとか、そういう異なる評価を受けるんですよね。
だから、最初のキャラメイクと合わせても、最初からプレイする度に全然違う人物として遊ぶことができるのです。
そして、似た者同士は惹かれ合う。仲間からの信頼度もそれによって変わります。
実はそうした信頼度が後半の展開にも生きてきます。
物語の後半。遺跡の深部において、主人公にとって「一番信頼する者」と一緒でなければ進めない箇所が。
そこで、仲間のうち一人だけを連れて行くことになるわけですが……
まさしく「お互いへの信頼」が、試されていくことになるわけです。
……もう、ここからの展開が『ベアルファレス』最大のみどころですよ。
ネタバレになるので詳しくは伏せますが、ともかくここで選んだ仲間がその後の展開において最重要キャラクターとなります。
もうここまで言えば薄々察しがついたかと思いますが!
つまり、「8周では全然足りない」というのは!
ここで選ぶ仲間キャラ13人ぶんのルートがあるからというわけですね!!!
ええ、ええ。
わたしは現状、とりあえず半分をクリアしたところ。女性キャラのみ全攻略した感じですね。
「ギャルゲー感覚かこのやろう」と思うかもしれませんが、いやいや。
このゲームの一番いいところはァ!!
「同性攻略」ができるところですからねえ!!!
つまりは女性主人公で女性キャラを全員攻略したってわけですね。
ええもう、百合百合の百合ですよ。
攻略するキャラごとに出身地も地位も名前も変えて別人設定にしたよ!! 何せCP固定厨だからさ!!
……いや、正直言えば、やっぱり古き時代のゲームですから。
異性攻略なら恋愛になっても、同性攻略すると友情エンドで処理されてしまうという寂しい側面はありますとも。
好みにもよると思いますが、個人的に「百合!!!」ってなったのは7人のうち2人くらいなもんです。
でもねーーー、この2人がスゴいんだよ……!
友情って明言されても「十分百合だから許す!!」って言えるだけの「力」、いや「パワー」があったよ……!!
西に泥棒娘のジェシカ!!
東にミステリアス美女のイヴ!!
こちらが『ベアルファレス』の百合二大巨塔です!!!
いや、詳しくは後半の展開にも関わるので伏せますが……少しだけご紹介するなら、
ジェシカは「同性キャラで唯一、主人公から告白できる」
イヴは「終盤、プロポーズまがいの台詞を主人公に叩きつけてくる」
というのが他とは一線を画すトコロですね……。(ネタバレ大丈夫ならドラッグ反転でどうぞ)
とりわけジェシカは終盤になればなるほど主人公大好きを隠しきれなくなっていくのでお気に入り中のお気に入り。
「ヒロイン7人なのに8周?」と疑問に思われた方もいると思われますが、それがジェシカ√が良すぎて2周したからデス。
という感じで、百合好きにもおすすめだぜベアルファレス。
わたしは今後男性主人公で残り6人の男性キャラも攻略するつもりですが。
もちろん、異性キャラも攻略できますし、恋愛展開にも多分なるので。
世にのさばるワタシのようなCP厨たちにおすすめのゲームだ!!
ちなみにワタシは異性攻略するつもりは毛頭ありません!!
えー、閑話休題。
百合の話にばかりなってしまいましたが、後半の展開はストーリーとしてもメチャクチャ面白いです。
もちろん「斬新!」とかではないですよ。古いゲームなので、時代は感じさせます。
とりわけあの頃はそれこそエヴァブーム末期あたりじゃないかな……。
でも、今遊んでも遜色ないシナリオの面白さは確かにあります。
激アツなラスボス戦~エピローグまでの流れも最&高なところですね……
それと細かい良いところとして「世界観が練り込まれている」というのがあります。
このゲーム、前述のとおり舞台となるのは拠点の街「カルス・バスティード」とダンジョン「アスラ・ファエル」のみです。
ですが、街がある大陸の周辺国の設定がかなり細かく設定されているんですね。
ファンタジー作品を作る上ではある種当然のことですが、しかしそれをも表現できるのがゲームの良さ。
シナリオに関わらない細かい設定部分は、「The Elder Scrolls」シリーズのように、街の本棚に置かれた本から知ることができます。
もちろん、読んでも読まなくてもOK。
こういう配慮があると世界観好きとしては嬉しくなりますよね。
『ベアルファレス』はゲーム作品としてみると中編程度のボリュームです。
しかし、何周しても全貌が知れない奥行きと面白さがある。
だから大好きなんだ、このゲーム……!
最初にご紹介した通り、今もゲームアーカイブスにて販売中。
ぜひともこの愛すべき隠れた名作に触れてみてください。
でもアザレの石と紫の剣には触るなよな!