たてかんばん

ゲームとかアニメとか、好きなように綴ります

「DDLC」をやってください

 ダウンダウンロードコンテンツじゃねえぞ!
 DDLC、『Doki Doki Literature Club!』のご紹介です。日本語で言うと『ドキドキ文芸部!』ですね。
 昨年9月ごろにSteamでフリーゲームとして配信され、一部界隈で話題に。
 2月ごろには非公式・公認で日本語化パッチが開発され、日本でもすっかり人気作になりましたね。

 

 だのでもうすっかりネタバレも出回るようになりました。
 今のうちだ、みんな。
 ネタバレを喰らうより先にSteamに登録して、日本語化パッチを当てて、クリアするんだ……!

 

 僕はどっぷり浸かって今の状態だ。
 激面白いぞ……!

 

 まず絵が超きれいなのはストアページを見ていただければわかると思う。
 でもちょっと思ったんじゃないだろうか。
「わりと普通の学園ものっぽい?」

 

 今どき、海外産の恋愛アドベンチャーはたくさんあります。
 それこそSteamを探せばいっくらでも出てくる。
 加えてPCゲームという土壌もあってか、日本の恋愛ゲームも結構Steamに参入していたりして、
 意外と今のSteamはギャルゲー戦国時代なのかも。

 

 そんな中にあって、「ただ文芸部で絵がキレイなだけの普通の学園モノギャルゲー」が、
「圧倒的好評」レビューを無数に与えられ、世界中のゲームファンに愛され、フォロワーが増え続けるわきゃあない。

 

かまいたちの夜』というサウンドノベルの大傑作が、史上の完成度を誇ったがゆえに、
 後に続いたノベルゲームというジャンルが苦しみ抜いて試行錯誤を繰り返してきたわけだけど。
 ノベルゲームってまだまだ色々できるな、というヨロコビがここにはある。

 プレイヤーがインタラクティブに進行させる物語としての楽しみが、可能性が、
 またひとつ、ここにありやがるんだよ!
『DDLC』の中に!

 

 OK?
 気になってきた?


 ならこんな記事は一刻も早く閉じて、Steamのストアページに行ってきてほしい。日本語化を忘れずに。
 平均プレイ時間は2時間超。そうなんだよ、短編なんだよ……!

 

「いや、あんまり気にならないしギャルゲーあんま興味ないな……」というアナタ。
 よし、ここからは少々ネタバレ込みでこの作品の魅力をご紹介しよう。
 核心にはできるだけ触れないけど、毒は底に行くほど濃くなっていくもの。
 気になったタイミングで記事を閉じてほしい。

 

 これは「最後まで読まれたら負け」の記事なのサ。

 

 

 

 

 

「This game is not suitable for children or those who are easily disturbed.」
(このゲームには子供に相応しくない内容、または刺激の強い表現が含まれています。)

 

 ゲームを起動した瞬間、いきなりそんな身も蓋もない注意書きが表示され、
 そりゃもう「あっ……(察し)」となったものである。
 しかも起動するたびに表示されっからな!

 

 でも、そうして身構えた状態で実際にゲームを始めてみると、
 そこには全くもって「普通のギャルゲー」の世界が広がっています。
 毎朝一緒に登校する幼馴染。
 ある日部活に誘われ、渋々行ってみるとそこは幼馴染含む美少女4人の弱小文芸部。
 サヨリ、ナツキ、ユリ、モニカ。
 4人のヒロインに「ぜひ入部してほしい」とせがまれ、下心ありつつも主人公は文芸部への入部を決める……。

 

 それがまた逆に怖いわけですよ!
 いつ、どこで、何が起きるのか、
 そもそもどういう「刺激の強い表現」なのかすらわからない。
 だって見ろよコレ! 普通のギャルゲーじゃねえか!
 海外製ながら舞台が日本(?)なので、多少の違和感はありつつも、
 しかし何が決定的な異変となるかはまるでわからない。
 五里霧中のまま、プレイヤーは文芸部員たちの和気あいあいとした日常を読み進めていきます。
 みんな、落ち着いて『魔法少女まどか☆マギカ』を初めて見た時のことを思い出すんだ。

 

 基本的なゲームの流れは、文芸部の活動として一日に一度、「詩を書いて見せ合う」というもの。
 4人のキャラクターは、それぞれ文体もテーマもまるで違う個性的なポエムを書いてきます。
 ここがまた好きな要素なんだなー!
 なにせキャラクターが自分のキャラソンを書いてきてくれるようなもの。

 これによって結構キャラクターの理解が深まったりします。

 ちなみに私はナツキ推しじゃぜ。3日目の詩は3つの意味でやべえよな。3つ全部やべえよな。


 ……カンのいい人ならば、この時点で詩にこめられた「何か」に気づくでしょう。
 別に、暗号や縦読みが含まれているわけではありません。
 彼女たちはただ、自分の目で見た世界のコトを書いているだけです。

 

 しかし、それに主人公が気づくコトはなく。
 漠然とした不穏さを含んだままに、日常はらせんを描きます。

 とりとめのない会話の中にも、実は今後の展開への暗示が敷き詰められていたり、何かとメタファーらしき台詞も多く。
 そしてわずかな違和感は軋みを上げて、
 登場人物たちに変化を与えていきます。

 


 ――そして、運命の日。
 呆然とするプレイヤーに「終わり」が無情に叩きつけられ、
 タイトル画面に戻ったその瞬間、
 ぼくらは本当の「始まり」を知ることになる。

 

 

 

 

 

 さあ、このゲームの本当にすごいのはここから。
 文芸部の日常は火花を散らしながら、加速度的に歪んでいきます。
 ……いいね?
 ここからはほんっとうにネタバレだからね??

 


 どこからそんなアイデアが出るのか、どうやってスクリプトを組んでいるのか、
 何がすごいって、そりゃもう目を剥くような視覚的・聴覚的演出の数々!
 それも「びっくり系」のような単純なモノではなく、
 じわじわと異変を身に染み込ませるようなものです。

 

 異常な挙動を見せるキャラクター。
 少しずつ焦点がずれていく画面。
 わずかに音程の外れたBGM。
 主題の見えない不可解な詩。
 ゲームの進行とともに、本体フォルダに排出されていく謎のファイル。

 

 それらが少しずつプレイヤーの認識を狂わせていきます。
 マウスクリックしてる指先がつめたくなっていくからね(体験談)。
 これがまた見てて肝が冷えるってのに、
 次はいつ、どこで何が起きるのか楽しみでクリックが止まらねえんだ……!

 

 何が一番笑ったって、「強制的に特定の選択肢を選んでしまう」展開。
 別に「そんな、ひどい……」とかじゃないんだぜ。
 やればわかる。

 


 そして彼女たちの日常もまた、徐々に異変を顕にします。
 立ち込める険悪なムード。言葉のナイフ。
 ある少女の暴走によって、部内の不和は決定的に。
 であれば、破滅は必定。

 

 ……そうして読み進めていくと、
 プレイヤーは薄々と感づいてきます。
 すなわち、「元凶は何なのか」。

 

 元来ホラーとは、
 恐怖の正体がわかってしまうと怖さが薄れてしまうモノです。
 この作品もその例に漏れません。
 しかしながら、この作品ではむしろ意図的と言っていいでしょう。

 

 そして、繰り返しになりますが。
 ゲームの物語は、プレイヤーの手で進行させるモノ。
 自らの手で結末を導くモノです。
 ただ眺めているだけでは、スタッフロールにたどり着けません。

 

 幕はその手で。
 うん、僕はこの「最後の一手」の演出だけでも100点中200点をあげたい。

 

 

 

 

 で、ここからはちょっと真面目な考察。

 

 恋愛ゲームの定番として、主人公がヒロインの苦しみを解決して結ばれる、というものがあります。
『DDLC』のヒロインたちもまた、それぞれ苦しみを抱えているわけで。
 その片鱗は彼女らの詩に織り込まれています。
「普通」と思う人もいれば、「重い」と思う人もいるでしょう。
 言い換えると、それぞれの苦しみが「生々しい」。

 

「才色兼備」「幼馴染」「ツンデレ」「ヤンデレ」と、
 一見するととても記号的に描かれたキャラクターたちですが、
 胸に抱えているものはひどく普遍的かつ現実的です。
(特殊な状況にある子もいますが、根本の苦しみはやっぱり普遍的なものだと思います)

 

 普遍的であるがゆえに、なんとかしてあげたいと思う。
 しかし、現実的であるがゆえに、他人が口を挟んで簡単に解決するものではない。

 

 それでもわかりあえない「隔たり」を踏み越えようとして、
 部員たちは少しずつ互いのボタンをかけ違えていきます。

 

 鮮烈なストーリーでありながら、
 このゲーム自体は決して露骨に批判的なテーマの作品ではありません。
 むしろ、根底にあるテーマはささやかなものです。


 ある少女の目の前に立ちふさがった一枚の巨大な「壁」こそが、
 それを読み解くヒントになるのかもしれません。

 

「This game is not suitable for children or those who are easily disturbed.」。
 その数々の演出自体ももちろん刺激的で魅力的です。


 でも、このゲームがこれほどまでに多くの人に愛されている理由は、
 彼女が全存在を賭けて綴ったあの「うた」が、
 多くのプレイヤーの胸に今も染み付いているからだと信じたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて最後まで読みやがったな!!!


 まあとにかく、このくらい語りに熱が入るようなゲームだと思ってほしい。
 ホント、ノベルゲームが好きな人はやって損ないし、
 あまり得意でない人も、ノベルゲームという形式のオモシロさを少しでも感じられるかもしれない。

 

 ぶっちゃけ、このゲームが斬新かというと、
 似たアイデアを核に作られた作品って他にもあります。
 でも、このゲームはこのゲームにしか描けないものを描いた。
 それだけで十分すばらしいものだと思うのです。


 
 だから……ね!

 

 

 

 

 誰よりも私と一緒に過ごすって約束してくれる?